マルケト社が主催したMarketing Nation Summit 2017について、第2回目の連載記事です。

前回のブログでは、テクノロジー・マーケティングテクノロジーの進化は多くのマーケターの活動を支える実行基盤を提供してくれるようになったものの、今こそマーケターはBuyerにとって寄り添った・かみ合ったコミュニケーション=Engagement を行わなければいけないというマルケト社のメッセージについて触れました。これは当たり前のことのようにも思えますが、逆行するようなマーケターの所作がどんどん増えていっているのは一人のBuyerでもある自分も強く感じています。テクノロジーの進化を活かしきれていないのです。

Buyerと、どのように寄り添った・かみ合ったコミュニケーションを行っていくべきかはさておき、今回はいくつかの現存するマーケティングテクノロジーについて活用例を含めて理解を深めておきたいと思います。

マーケティングテクノロジーはMarTech全体で捉えなければいけないと思いますが、マルケト単体でもマーケティングテクノロジーをどんどん取り入れ強化しています。ABM, Predictive Content, Analyticsなどがその例です。

下図はDay3のブレイクセッションで配布された資料です。これは主なマーケティング機能の活用レベルによって、マーケティング実行レベル(成熟度)を4段階で測定するためのワークシートとなっています。ここに記載されているマーケティング機能はすでにマルケトが機能として備えているものがほとんどです。

BtoBやBtoCの違いなどを理由に、自社ではそもそも注力していない機能領域も含まれているとは思いますが、みなさんのマーケティング成熟レベルは総合的にどこに位置付けているでしょうか?簡単に4つのレベルを日本語で整理し、具体的な活動の状態をイメージしてみたいと思います。


実行レベル1 ~後発対応・Reactive~

”ある時点”のために計画されたシングルチャネルのマーケティング

  • バッチキャンペーンによるEメール配信
  • ランディングページの制作
  • フォーム作成とプログレッシブプロファイリング
  • 基本的なセグメンテーション
  • Eメールとランディングページのテンプレート化
  • CRMなどのデータとのインテグレーション
  • Ad-hocキャンペーンレポート
  • Eメール到達率の最適化
  • Webサイトビジターのトラッキング

 

この実行レベルにおいてはCRMとの基本的なデータ連携を終えマルケトの一通りの機能は理解したうえで、ランディングページを制作したり、段階的に見込み客の情報を収集するよう工夫されたフォーム作成ができたり、配信到達率などEメールパフォーマンスの改善などを継続している状態です。

一見、マーケティング活動の状態としてはそこまで未熟ではないようにも思えますが、この状態は最も多くのMA導入企業が陥っている単にMAがメール配信ツールの置き換えになっている状態であると思います。言い換えると「メールマガジンXX月号」という定期的なこれまでの活動を継続している状態です。メールマガジンという言葉自体が、いかにもメッセージごちゃまぜな古典的な日本のマーケティング活動と感じます。後述する行動ベースでのコミュニケーションや継続的・自動的なマーケティング活動にはなっていません。


実行レベル2 ~予防対応・Preventative~

”継続性”のあるマーケティング活動

  • トリガーキャンペーンによるEメール配信
  • 基本的なナーチャリングキャンペーン
  • 基本的なEメールのパーソナライゼーション
  • 属性によるセグメンテーション
  • エンゲージメント頻度によるスコアリング 
  • イベント/ウェビナーのプログラム 
  • End to Endのレポーティング
  • マーケティング部門外のチームへの共有
  • ソーシャルマーケティング機能のインテグレーション
  • ランディングページのパーソナライゼーション
  • Webコンテンツのパーソナライゼーション
  • ターゲットアカウントに関するABMの実行

 

この状態は、マーケターが恣意的に決めたマーケティングカレンダーに基づく活動から脱しようとしています。例えば、特定製品のカタログをダウンロードした顧客に対してn日後から段階的に製品活用事例をお知らせするという自働化プログラムが実装されていたり、特定ページにアクセスした顧客にはその行動を”きっかけ”として関心の高そうなメールを自動で配信したり、その行動を特定製品への興味としてスコア累積したり、卸・小売業などアクセス企業の属性情報に応じたコンテンツ表示の出し分けを行う・・・などができている状態です。

定期的なマーケティング活動ではなく、継続的・自動的な活動に変化しようとしています。こうした活動が実現できている国内企業は多いと思いますが、この領域に含まれていてレベルが高いと感じるのはマーケティング以外のチームと情報共有を行い、そうした社内コミュニケーションに基づいた特定アカウントへのマーケティング関与(ABM的アプローチ)が実現しているということです。国内企業特有のセクショナリズムなどが弊害となって、CXO・営業・マーケティングがOneTeamで取り組むことにはまだまだ一定以上のハードルがあると思います。同一レベル内でもABMを同時に実現できている企業はまだまだ少ないと感じます。


実行レベル3 ~積極的で気の利いたマーケティング・Proactive~

チャネル横断で個々に合わせたコミュニケーションの実行

  • マルチチャネルでのキャンペーン実行
  • 進んだナーチャリング活動
  • 進んだEメール配信
  • 行動によるセグメンテーション
  • 売上に対する貢献度の測定
  • プログラムやキャンペーンの効果分析
  • SMSやアプリなどモバイルとの連携 
  • PredictiveなWebコンテンツ 
  • 複数のデータソースとの連携 
  • 購買期待値が「似ている」ターゲットに拡張した広告ターゲティング

 

このレベルのProactiveを"気の利いた"と訳すのが正しいのかはわかりませんが、何かしっくりきます。進んだという表現は非常に抽象的ですが、私の持つイメージで考えたいと思います(Marketo社が機能にAdvancedという言葉を使うときは動的な要素が含まれているということだと思いますが)。このレベルでは継続的・自働化された育成プログラムは、より顧客に合わせた高度な実装内容に変化しています。例えば『潜在→課題顕在→行動量が増えスコア値超過→営業へ送客』といった単一の育成プログラムも顧客の購買意識の状態に合わせてコミュニケーションしているという意味で評価できます。しかし更に上を目指すのであれば、これも極めて画一的な自働化プログラムであると言わざるをえません。

顧客購買プロセスといえど、経営層が検討するときと担当者が検討するときではその検討プロセスも触れているコミュニケーションチャネルも明らかに異なります。こうした違いを高度なスコアリングロジックや外部データソースを元に的確に把握し、それぞれに合わせたマルチチャネルでの細分化された育成プログラムを実現できているのがこの状態といえます。さらに施策ごとに創出した商談金額や売上金額、つまり「¥」との相関性を把握して施策の取捨選択を高サイクルでまわし、コンテンツ評価も事後的に結果を振り返り勝敗付けるのではなく、実際にアクセスされコンバージョンされた結果をWebサイト自体が自動解析・学習し、最適なものを表示することができている状態です。

海外でも日本のマーケターが表彰される機会が増えてきていますが、一部の国内マーケターのトップランナーはこの状態を実現していると思います。国内では連携できる外部データソースが不足していたり、セキュリティイシューが原因でBtoBのデータソースが活用できるレベルになかったりと大きな不利はあるものの、日本人のきめ細やかさが故に、購買意識の状態把握や細分化された育成プログラムのロジック設計が海外も驚く非常に高度なものになっているとクライアントワークを通じて私も感じています。社内におけるLeadGen,DemandGenそれぞれのマーケティング活動が¥との相関性を求められはじめていることも間違いないと思いますが、まだまだマーケティング活動が社内で定常業務化していないため評価のあり方も定まっていないのが国内の現状だと思います。


実行レベル4 ~変化を続けるマーケティング・Transformative~

チャネル横断でライフタイム全体での関係性を維持する

  • ライフタイム全体でのナーチャリング
  • チャネル横断でのPredictiveなコンテンツ
  • オムニチャネルでのキャンペーン
  • 進歩した売上分析
  • グローバル企業規模での取組み

 

顧客との関係をライフタイム全体で考え、あらゆるチャネルでコミュニケーションができている状態です。例えばあるブランドを購入したときにWelcomeメールか届く。そのブランドからリリースされたモバイルアプリを使って自分だけのお気に入りの情報に触れ、さらに実店舗で購入し、ブランドへの好感度が高まっていく。違うブランドへの乗換も買替えもせず、顧客のライフタイム全体が続いていくという状態です。P&Gやコカ・コーラといったグローバル企業規模のリソースがなくても、同規模の取り組みを目指すことはできます。国内でもZOZOなどのBtoC企業ではこうした状態に近づいていると一消費者として感じます。

 

 

今回紹介した機能の中で、特にPredictiveなコンテンツ・ライフタイム全体でのナーチャリングについてはブレイクセッションなどで具体的な取組みについての紹介がありました。次回はそれについて紹介したいと思います。