あなたのマーケティング実行レベル・成熟度は?
マルケト社が主催したMarketing Nation Sum…
イベントレポート | 2017/11/22 |
2017年11月16日、BtoBマーケティングイベント「SiriusDecisions 2017 Summit APAC」に参加しました。開催地は多国籍企業が「アジアのハブ」として注目しているシンガポール。多民族国家であることに加え、各国の駐在員が街を行き交う人種のるつぼです。
主催者であるSiriusDecisionsは、リサーチ&アドバイザリーファーム「ガートナー」から独立したアメリカの企業で、BtoB企業のマーケティング、営業部門・マーケティング部門の組織づくりを支援しています。
B2Bマーケティングの最大級イベントである「SiriusDecisions Summit」はこれまでも米国や英国にて開催されていますが、アジア・アセアニア地域(APAC)での開催は今回が初めて。ホテルとイベント会場が一体化した施設に、APACに拠点を置く多国籍企業の参加者250人以上が集まりました。今回のスピーカーでもあったSiriusDecisionのGil Canare氏に尋ねたところ、参加者の多くがテクノロジー系(ICT)の企業とのことでした。日系企業の参加者の姿は見受けられませんでした。
残念ながら、コーポレートとリージョンの関係は部門内と部門間の両方において緊張関係にあると多くの多国籍企業が口にします。今まで、彼らのリージョナル戦略は、コミュニケーションやプロセスにおいてコーポレートが立てた戦略の直輸入版を使用せざるを得ませんでした。これが内的連携不足(リソースの非効率的な使用、無駄な時間や落胆)かつ外的連携不足(連携のとれていないメッセージや市場投入までの時間、そして更なる落胆)に陥らせるのです。
そこでSiriusDecisionsは、グローバルビジネス環境のますますの変化に伴い複雑化する多国籍企業の組織間連携・融合をいかに促進させるかをイベントの主要メッセージとして掲げ、6つのキーノートを紹介しました。
また、「営業・マーケティング・製品」の3部門間の連携を促進させるため、各部門へのアクション・アイテムが提供されました。今回の速報では、主にその概要を大きく2種類に分け、何が学べるものだったのかについてご紹介します。
今回の主題メッセージ
「高度に可視化され接続し合ったグローバルビジネス環境の中で活動する新世代の組織と労働者が進化するにつれ、コーポレートとリージョンの関わり方を見直す必要がある」
「コーポレートとリージョンは、互いの相違点にとらわれるのではなく、共通の強みを発揮して”共通の課題”(=成長)に取り組むために協力し合うことが求められる」
コーポレートとリージョンがうまく連携することにより、売上向上を19%加速化、生産性を15%高められるという調査結果が冒頭で共有され、さらにSiriusDecisionsの代表Tony Jaros氏は、コーポレートとリージョンの関係を親子の関係に例え、「営業、マーケティング、製品の共通の目的は成長すること。だからこそ三者間の連携(Alignment)が重要」と強調しました。
こちらのセッションでは、B2B購買プロセスによく見受けられる5つの「Mythology (=迷信)」ゆえ生じている誤解を、実際の調査を元に解いていきます。
迷信① 購買プロセスは一つである
迷信② B2B購買プロセスは直線的である
迷信③ 人間はデジタルで置き換えることができる
迷信④ B2B顧客は購買プロセスの初期段階では営業と関わらない
迷信⑤ グローバル顧客とリージョナル顧客に違いはない
例えば迷信⑤では、購買プロセスの「教育(Education)」⇒「ソリューション(Solution)」⇒「選択(Selection)」の各段階で、どのようなコンテンツタイプがグローバルとリージョナル顧客それぞれに好まれるかの理解が、地域毎のマーケティング活動を最適化するために重要であることが取り上げられました。
統合型マーケティング・コミュニケーションなどといったグローバル企業としての要件と、文化的・言語的関連性を向上させるというリージョナル要件のバランスをとるにあたって地域マーケターが抱えがちな5つの挑戦に対し、新たにローカライゼーション・フレームワークが発表されました。
課題① 一貫性と関連性のバランス
課題② 限られたリソースの分配
課題③ 各地域文化への配慮
課題④ 各国レベルでの複雑さ
課題⑤ グローバルとリージョナル間のタイムリーな連携調整
Microsoft APACでCMOを務めるJolaine Boyd氏も、コーポレート・コンテンツからターゲット地域とのギャップをつきとめ、地域用、さらには各国用に最適化していくことが必要であると述べていました。
ここで言われている「フィールド・マーケティング」は、各国支社やリージョンのマーケティング担当のことを指しており、顧客と営業の進化する要求に応じるためにも、フィールド・マーケティングを成熟させる必要がある点が強調されました。では、どのように成熟させることができるのでしょうか。この問いかけに対し、SiriusDecisionsのMark Levinson氏は「フィールド・マーケティング成熟モデル(Field Marketing Maturity Model)」を展開します。
このモデルによって、B2B企業のCxOはフィールド・マーケティングを評価し、どのエリアに投資を継続し、最適化していくかの決断をとれるようになります。
フィールド・マーケティング成熟モデルの6つの構成要素
2017年5月に発表された、Demand Waterfall®の派生形であるDemand Unit Waterfall®が、今回初めてAPAC地域に持ち込まれ「いつ、どのようにDemand Unit Waterfall®を導入するべきか」の決断に役立つフレームワークが紹介されました。また、Demand Unit Waterfall®をフルに採用していない企業に対しても、どのように各要素を役立てることができるかを説明していました。
APACは成長率が高いリージョンではありますが、マーケティング・リソースは不十分であるケースが多く、リソース配分の優先順位付け・選択集中が重要であり、とりわけABMがソリューションとなり得やすいようです。ただ、ABMがマーケティングのすべての課題に対する解決策として期待されすぎているのが実態で、このセッションでは、その万能薬的イメージを払拭し、ABM戦略を策定するための準備レベルの評価方法の例を紹介しました。
また、最適なスタート方法、ABMへの賛同を得るために必要な成功例の作り方、スコープの確立法、組織の準備状況(readiness)の評価方法、能力ギャップの特定と主要ステークホルダーとの連携方法などのABMの成功要素が、APACの特色を踏まえながら紹介されました。
ABMのセッションを担当したNickey Briggs氏と対話した際、日本について次のようにコメントしていました。
— SiriusDecisions Nickey Briggs氏以上がイベント速報ですが、一部のセッションについて、より詳細なレポートを後日展開いたします。グローバル・コーポレートが日本を含むAPACとの連携を強化させ、今後このリージョンが今まで以上の盛り上がりを見せることを願ってやみません。2BCも今回のイベントで得たものを大いに活かして参ります。
モナール 園子 (Sonoko MONARD) / 2BC Inc.