2016年5月24日〜27日の4日間にかけて、世界最大級のBtoBマーケティングのイベントである「SiriusDecisions SUMMIT 2016」に参加しました。開催地はアメリカのテネシー州、ナッシュビルという都市で、音楽の都と称され街中に音楽があふれています。このような街の郊外にある、Gaylord Opryland Resortというホテルとイベント会場が一体化した施設に2000人以上のBtoBマーケティングに関わる人々が集まりました。その概要と何を学べるのかについて、いくつかのプログラムとともにご紹介します。
2016年のテーマ「Art & Science of Intelligent Growth」
SiriusDecisionsは、BtoB企業のマーケティングや、営業部門やマーケティング部門の組織づくりを支援するアメリカの企業です。同社が培ったノウハウやフレームワーク、ケーススタディを紹介するとともに、アメリカを中心としたBtoBマーケティング向けシステムやサービス提供企業の展示も行われる一大祭典がこのSUMMITという位置付けです。すでに11回開催されているという実績、2000名以上の参加者ということを考えると、多くのBtoB企業に支持されていることがうかがえ、まさに最先端を走る企業といえましょう。今回のテーマは「Art & Science of Intelligent Growth」。“音楽の街”というこの地を意識したコピーが付けられています。
その4日間にわたるプログラムの中でも、いくつかの内容をご紹介します。
Sirius Foundation Sessions
初日の午前中に行われたのが、基本的な用語を35分でおさらいするこのセッションです。同時に4箇所でセッションが行われるので、自分が最も興味を持つ内容のセッションにしか出られないのが残念なところです。そのプログラムを見てみましょう。
どのセッションを受講するか難しい選択。悩んだ末、黄色にマーカーした3セッションに参加。
中でもAccout Based Marketingのセッションは、今、注目を集めているだけあって多くの参加者でにぎわっていました。短時間ながら、独自のフレームワークをもとに異なるアカウントでの取り組み方のエッセンスを紹介し、「ABMリーダーになるためのおすすめセッション」を紹介していました。
いま、ABMというと、その多くがLarge Accountを対象したものが多いでしょう。それ以外にNamed Accout、IndustorySegmentまで分類し、具体的な手法をフレームワークで紹介している点で特徴的と感じました。
コンテンツクリエイティブという立場から注目したのはCommunicationsのセッションです。コミュニケーションの定義は変わるものではないけれど、その手段は多様化し、それぞれ特化が進んでいるのは洋の東西を問いません。このコミュニケーションを、Brand and Reputation、Influencer Relations、Content and Messaging、Social Media、Structure and Measurementの5つに分類し、それぞれに対する取り組み方のアウトラインを紹介していました。
Sirius Keynote Sessions
SiriusDecisionsの、最新のBtoBマーケティングに対する取り組みや考えを述べるKeynote Sessionsは各日1〜2セッション行われました。2000人以上もの収容量はあろうかというメイン会場で行われます。初日のKick off Keynotesはグランドピアノの演奏から始まるという趣向で「Art & Science」というテーマのArt=音楽を表したものでもあります。学びへの緊張感を、Artにより緩和するというバランス感覚には感心します。
またこのKeynote Sessionsの中では、著名な「Demand Waterfall」についても改めて詳細解説がありました。InquiryからMarketing qualifications、Sales qualificationsを経てCloseに至る流れをわかりやすく解説したこのモデルは実際、多くの事例にも登場し、その効果を証明しています。しかし、アメリカでも今なお、こうした“基本”ともいうべきフレームにもとづいてマーケティング・セールスを実施できている企業がすべてではないのでしょう。このWarterfallの内容を分解し、いかに売上に寄与するのか細部に渡って解説していました。“基本”に忠実に、徹底することがいかに重要か、改めて気付かされます。
ROI Award Winner Presentation
ROI改善に成功した企業が、自社がどのようにして、どのくらい改善できたのかを発表するセッションです。Zebra Technologies社、Microsoft社、ServiceNow社、FIS社、Commvault社など、世界的に名立たる企業の改善例を紹介します。それぞれの企業らしさにあふれた表現豊かなプレゼンテーションも見ものですが、やはり注目したいのは「Science」の部分。フレームワークを活用し、どの施策を行い、どのような効果が現れたのか、丁寧に1つひとつ数値化されていること。仮説に基づくすべての施策を記録に残し、検証可能な状態にしあることは、より効果的な改善策につながることでしょう。
例えば上記のWaterfallを実践したときにも、それぞれの過程においてどのような数値が得られたのか記録されます。強みや弱みが可視化・客観化されることで、次に何をすべきかが明確な根拠ととも判断できるようになります。「当たり前」と思われるかもしれませんが、BtoBマーケティングに関わる方ならば、基本に忠実に徹底的に取り組む難しさをご存知でしょう。次回コラムでは、上記のうちMicrosoftの事例について、もう少し細かく紹介します。どこまで取り組んでいるのかを参考にしてみてはいかがでしょうか。
▲ROI Award Winner Presentationの一コマ。目を惹くプレゼン、数値化された施策の結果。ArtとScienceが共存している。